今の時期、店では松茸を使い始めた。そのきのこを、私はさっと洗う。ただし使う直前に限る。
「きのこは洗うな」と教わった人は多いと思う。洗うと風味が飛ぶ、という理屈だ。だが長年きのこを扱ってきて、その理屈には違和感がある。問題は洗うことそのものではない。洗って放置することだ。
洗うのが問題ではない。洗って置いておくのが問題だ
私は下ごしらえの最後、使う直前にきのこをさっと洗う。石づきは捨てる。

きのこは構造上、水を吸いやすい。水を吸うと、傷むスピードが上がる。傷めば香りも味も落ちる。だから正確に言えば「洗うと風味が落ちる」のではなく、「洗って放置すると傷む」だ。香りそのものは、さっと洗った程度ではそこまで変わらない。
市販されているきのこは、たいてい菌床栽培で、衛生的な環境で育てられている。メーカーが「洗わなくてもよい」と説明しているのはそのためだ。ただしこれは「洗ってはいけない」という意味ではない。
きのこは中火で焼く。強火だと中に入る前に焦げる
火入れは基本、中火だ。強火だと表面ばかり早く焦げて、中まで火が入らない。時間に余裕があるときは、弱火でじっくり焼く。
焼きすぎにも注意している。焼きすぎると水分が抜けて、身が縮んで小さくなりすぎる。
煮るときのアクは、味だけでなく色も変える
きのこは思いのほかアクが出る。焼くときはあまり気にしないが、煮るときは別だ。アクを取らずに煮ると、味が濁るだけでなく、汁の色まで変わることがある。スープや餡を作るときは特に注意している。
合わせ出汁に漬けて、冷めるまで置く
干し椎茸は、たまに合わせ出汁で使う。あらかじめ合わせておいた出汁にきのこを漬け込み、加熱したあとも冷めるまでそのまま置いておく。急いで引き上げるより、味の入り方が落ち着く気がする。
料理長メモ:きのこは冷凍してから加熱すると、うまみ成分のグアニル酸が増えることが調理科学の研究でわかっている。女子栄養大学の研究で、日本調理科学会誌に2015年に発表された内容だ。対象はナメコ、ブナシメジ、エノキタケで、椎茸は含まれていない。
原木椎茸と菌床椎茸の違い
秋のきのこで一番好きなのは、原木椎茸だ。国産の松茸は別格として、それ以外では原木椎茸が一番美味しいと感じている。
原木椎茸はサイズが揃わない。見た目は菌床のものより不揃いで、見劣りすることもある。ただそのぶん、野生味がある。

肉厚か、香りが強いか、味が濃いかは個体差が大きく、断定はできない。それでも食感の良さは、全体的に菌床のものより上だと思う。
菌床栽培が悪いわけではない。衛生的で扱いやすく、味も十分にいい。私が原木を好んでいるだけの話だ。
松茸は香りはいい。ただ値段が高すぎる
今の時期は松茸も使い始めている。香りの良さは確かに別格だ。ただコスパで言うと、何とも言えない。需要と供給の問題なのだろうとは思う。それでも、値段は高すぎると感じる。
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