翡翠色は下ごしらえでは出せない。新銀杏かどうかで決まる。
銀杏は買ってからの下ごしらえの丁寧さより、収穫からどれだけ時間が経ったかによって色が変わってくる。
秋のうちでも、買うタイミングが違えば、まったく同じ扱い方をしても仕上がりの色は違ってくるものだ。
翡翠色が出るのは新銀杏だけ。後半のものは黄色くなる
JAあいち経済連は、銀杏の色について9〜10月は翡翠色、その後は黄金色になると説明している。
日本植物生理学会は、銀杏の緑色の原因はクロロフィルで、収穫後は常温で短期間に黄色く褪色すると説明している。
色止めの技術で緑を保っているわけではなく、収穫からの経過時間によって緑から黄色へと変わっていく現象だと分かる。
だから翡翠色にこだわりたいなら、下ごしらえの手順よりも先に、時期そのものを意識した方が近道になる。
新銀杏は殻が乾いていて、割りやすい
新銀杏は取れてまもないため、殻がきっちり乾燥している。
シーズンが進んで中後期になると、殻の水分量が増えてくる。逆に中身は痩せて、振るとカラカラと音がするものが出てくる。
殻の水分が少ないと、割と簡単に割れる。水分が多いと殻が若干柔らかくなり、力を入れてもパキッと割れにくくなってくる。
新銀杏の殻が乾いているのは、出始めで価格が高めな分、丁寧に乾燥させてから売られているからではないか、と思う。
保存して時間が経つと、中身の水分が外側の殻に奪われて中身が痩せ、殻は逆に水分を帯びていくのではないか、と考えている。最悪の場合はカビが生えることもある。
色も翡翠色になりやすく、殻も乾いていて割りやすい。新銀杏はいくつかの点でまとまって扱いやすい時期だ。
殻は100均の道具で割れる
殻を割るのに使っているのは、100円ショップで売っている銀杏割り器だ。特別な専門道具を揃えているわけではない。20年やってきて手元に残った道具は五つだけで、銀杏割り器はそこにも入っていない。
割り方のコツは、道具の形と銀杏の大きさ・形によって少しずつ変わってくる。銀杏は一粒ごとに大きさも形も揃っていないので、当て方も毎回微妙に違う。
言葉で伝えるのは難しいが、コツを掴むのは意外と簡単だと思う。
料理長メモ:農林水産省は、紙封筒に口を折り600Wで30秒加熱して殻をむく方法を案内している。割れていないものはキッチンバサミの丸い部分で潰す。パナソニックは、栗や銀杏は破裂しやすいため割れ目を入れてから加熱するよう説明している。
力を入れすぎて潰すのは、殻が湿っているときだ
殻の水分が多いと柔らかくなり、いつものようにパキッと割れず、力加減が難しくなる。
乾いている殻と同じ力で挟んでも、うまく割れてくれないことが多い。
そういうときに限って、力を入れすぎて実を潰してしまうことが今でもしばしばある。
塩煎りにするから、割れ目だけ入れて塩水に漬ける
店で銀杏を使うのは土瓶蒸し、茶碗蒸し、塩煎りの三つだが、このうち塩煎り銀杏がよく出る。
殻は割り切らず、割れ目を入れるところで止めて、そのまま塩水に漬けて保存している。
塩水の濃度は5%にしていて、その状態で1〜2週間はもつ。水が濁ってきたら、その都度、新しい塩水に替えている。
殻を剥き出しにしてしまうと塩煎りができなくなる。この形で保存しているのは、そのためだ。
塩煎りは鍋に塩を入れて、殻に焦げ目がつくまで
作り方は、鍋に塩を入れ、その中に割れ目だけを入れた銀杏を入れて加熱するだけだ。
火加減は中火くらいにしている。食べられるタイミングの目安のひとつは、殻に焦げ目がつくくらいだ。
剥くのは使う分だけ。薄皮は指で剥ける
土瓶蒸しや茶碗蒸しに使うときは、まとめて剥いておくのではなく、その都度、殻と薄皮を剥いている。
薄皮は特別な道具を使わず、普通に指で剥いていく作業だ。
省ける工程はない。作る料理にもよるが、大体は薄皮まで剥かないと食べられる状態にはならない。
加熱しても毒は消えない
日本中毒情報センターは、銀杏の有毒成分について熱に安定しており、加熱調理しても毒性がなくなることはないと明記している。
同センターは、この成分がビタミンB6の働きを妨げ、神経が異常に興奮してけいれんが起こると説明している。
そのうえで、小さな子どもには食べさせないよう呼びかけている。
土瓶蒸しでも茶碗蒸しでも塩煎りでも、この性質そのものは変わらない。
料理長メモ:東京都保健医療局によると、約50個食べた1歳男児は3時間後に全身けいれんを起こし、60個食べた41歳女性も4時間後から嘔吐や手のふるえが出た。日本中毒情報センターは、茶わん蒸し程度で症状が出た例は把握していないとしている。
たくさん食べる人には、ほどほどがいいと声をかける
銀杏をたくさん食べようとする人には、一応声をかけるようにしている。
かけ方は「中毒になると言われているからほどほどがいいと思いますよ」くらいの感じだ。
何個までなら平気、という具体的な線引きはしていない。あくまで感覚的な声かけをしているだけだ。
そのあとどうするかは、お客さんの自由だと考えている。
料理歴20年以上の現役料理長。和食・肉料理の現場で培った知識を、家庭で活かせる形で発信しています。調味料の使い分けから包丁の選び方まで、プロの本音で解説するブログ「料理長まっくるの和食帳」を運営中。