料理長は肉に温度計を刺さない。それでも家庭には勧める理由
私は店で肉を焼くとき、芯温計は使わない。それでも家庭には、温度計を持つことを勧める。
包丁、まな板、鍋、フライパン、砥石。20年使い続けて手元に残った道具と、その選び方をまとめています。高いものを勧めるためではなく、「家庭に本当に必要なものはどれか」を絞るために書いています。買わなくていいものは、買わなくていいと書きます。
私は店で肉を焼くとき、芯温計は使わない。それでも家庭には、温度計を持つことを勧める。
おろし金を選ぶとき、コンパクトなものを選んでいないだろうか。小さいおろし金は、手軽そうに見えて実は損をする。時間が余計にかかり、力も入れにくい。
店の焼き場に置いてある卵焼き器は銅だ。使い込んで、飴色に光っている。性能でいえば銅が一番いい。それでも家庭には勧めない。テフロンで十分だ。
2〜3年前、自宅の炊飯器を手放した。理由は単純で、鍋で炊いたご飯のほうが美味しかったからだ。
圧力鍋は、買っても使われなくなる道具の代表格だ。週に2回以上、乾燥豆・すね肉・角煮のような「1時間以上煮続ける料理」を作る家だけ買えばいい。それ以外の家は、今持っている鍋で足りる。
キッチン用品売り場でステンレス・アルミ・ホーロー・鉄と並んだ鍋を前に、どれを選べばいいか迷ったことはないだろうか。素材の違いばかり気にする人は多いが、実際に家庭料理で失敗しやすいのは素材選びよりサイズ選びのほうだ。
見習いに包丁の手入れを教えるとき、最初から荒砥・中砥・仕上げ砥の3本セットを持たせたことは一度もない。持たせるのは中砥石だけだ。3本並べて渡すと、どれをいつ使えばいいのか混乱して、結局どれも中途半端にしか使えなくなる。ま…
数年前、店の厨房を整理したことがある。開店当初に揃えた道具、いただきものの調理器具、「便利そうだ」と買ったものの一度しか使っていないアイデア商品。棚の奥から出てくる出てくる。結局、処分した道具は段ボール3箱分になった。
土鍋ご飯は難しい、というのは思い込みだ。
朝7時の厨房。誰もいない静けさの中で、私はコンロに鉄フライパンをかけ、空焼きから一日を始める。うっすらと煙が立ち、黒い肌がわずかに青みを帯びてくる。ここに油を回し入れてなじませると、表面がしっとりと艶を持つ。この儀式を終…