プロの料理長が教える出汁の取り方完全ガイド|昆布・かつお・合わせだしを徹底解説

「ちゃんとした出汁を取りたいけど、なんか難しそう」

そう思っている方、多いと思います。でも正直に言います。出汁を取ること自体はそんなに難しくない。難しいのは「正しい手順を知っているかどうか」だけです。

料理歴20年以上の現役料理長が、昆布だし・かつおだし・合わせだし・煮干しだし、それぞれの取り方をプロのコツ付きで徹底解説します。

1. そもそも出汁とは何か|和食における出汁の役割

出汁(だし)とは、食材を水に浸したり加熱したりすることで旨みを引き出した「旨みの液体」のことです。

和食において出汁は、料理の土台です。味噌汁・煮物・茶碗蒸し・うどん・炊き込みご飯…どれも出汁がなければ成立しない。洋食でいうところのブイヨンやフォン、いわば「縁の下の力持ち」です。

出汁の旨みは主に3種類の成分から来ています。

  • グルタミン酸:昆布に多く含まれる旨み成分
  • イノシン酸:かつお節・煮干しに多く含まれる旨み成分
  • グアニル酸:干し椎茸に多く含まれる旨み成分

この中でグルタミン酸とイノシン酸を組み合わせると、旨みが単独の8倍以上になると言われています。これが「合わせだし」が美味しい理由です。

料理長として20年やってきて確信しているのは、出汁の質が料理の完成度を決めるということ。どんなに食材が良くても、出汁が弱いと料理全体が締まらない。逆に出汁がしっかりしていれば、シンプルな料理でも深みが出ます。

2. 出汁の種類

和食で主に使われる出汁は4種類です。

出汁の種類主な食材特徴主な用途
昆布だし昆布上品でやさしい旨み湯豆腐・茶碗蒸し・精進料理
かつおだしかつお節香りが強く風味豊か味噌汁・うどん・そば
合わせだし昆布+かつお節旨みが深く万能煮物・鍋・茶碗蒸し・あらゆる和食
煮干しだし煮干し(いりこ)コクがあり力強い旨み味噌汁・ラーメン・うどん

それぞれ特徴が違うので、料理に合わせて使い分けるのがプロの仕事です。ただ家庭では合わせだしを覚えておけばほぼ対応できます。

3. 昆布だしの取り方|プロのコツ付き

材料(1Lあたり)

  • 昆布:20〜30g
  • 水:1L

手順

①昆布を水に浸す
昆布を水に入れ、冷蔵庫で一晩(8時間以上)浸けます。これが「水出し法」です。時間をかけてじっくり旨みを引き出すことで、雑味のない上品な昆布だしができます。

②加熱する場合
時間がない場合は鍋に昆布と水を入れ、弱火でゆっくり加熱します。60〜70℃を保ちながら20〜30分加熱してください。

③昆布を取り出す
沸騰する直前(鍋底に小さな泡が出始めたころ)に昆布を取り出します。沸騰させてしまうと昆布の粘りと雑味が出るので注意。

プロのコツ

昆布は拭かない
昆布の表面についている白い粉は「マンニトール」という旨み成分です。水で洗ったり濡れ布巾で拭いたりすると旨みが逃げます。汚れが気になる場合は乾いた布巾で軽く拭く程度にしてください。

水出しが断然おすすめ
料理長として言わせてもらうと、昆布だしは水出しが一番美味しい。加熱するよりも雑味が出にくく、澄んだ上品な旨みになります。前日の夜に仕込んでおく習慣をつけると楽です。

方法時間旨みの強さ手間おすすめ度
水出し(冷蔵一晩)8時間以上少ない★★★★★
弱火加熱(60〜70℃)20〜30分中程度★★★★☆
沸騰させる5〜10分△(雑味あり)少ない★★☆☆☆

4. かつおだしの取り方|プロのコツ付き

材料(1Lあたり)

  • かつお節:20〜30g
  • 水:1L

手順

①水を沸騰させる
鍋に水を入れ、沸騰させます。

②かつお節を入れる
火を止めてからかつお節を入れます。沸騰した状態でかつお節を入れると雑味が出るので、必ず火を止めてから。

③1〜2分待つ
かつお節が鍋底に沈むまで1〜2分待ちます。かき混ぜないこと。

④こす
キッチンペーパーまたは布巾を使ってこします。絞らないのがポイントです。

プロのコツ

絞らない
こすときにかつお節を絞ると、えぐみや雑味が出汁に混ざります。自然に落ちるのを待つだけでOK。

火を止めてから入れる
これは絶対に守ってください。グラグラ沸騰している状態でかつお節を入れると、香りが飛んでしまいます。かつおだしの命は香りです。

かつお節は高品質なものを
料理長として20年やってきて思うのは、かつお節の質が出汁の質に直結するということ。スーパーで一番安いものよりも、少し品質の高いものを選ぶだけで出汁の味が変わります。

かつお節の量(1Lあたり)旨みの強さ用途
10g(薄め)弱い薄い椀物・繊細な料理
20〜30g(標準)適度黄金色味噌汁・煮物全般
40g以上(濃い)強い濃いつゆ・濃いめの煮物

5. 合わせだし(昆布+かつお)の取り方|プロのコツ付き

合わせだしは和食の基本中の基本です。昆布のグルタミン酸とかつおのイノシン酸が合わさることで、旨みが何倍にも膨らみます。

材料(1Lあたり)

  • 昆布:10〜15g
  • かつお節:20〜30g
  • 水:1L

手順

①昆布を水に浸す
鍋に昆布と水を入れ、30分〜1時間浸けます(時間があれば冷蔵庫で一晩)。

②弱火で加熱する
弱火でゆっくり加熱します。60〜70℃を保ちながら10〜15分かけて昆布の旨みを引き出します。

③昆布を取り出す
沸騰直前(鍋底に小さな泡が出始めたころ)に昆布を取り出します。

④かつお節を入れる
火を強めて沸騰させ、火を止めてからかつお節を入れます。

⑤1〜2分待ってこす
かつお節が沈んだらキッチンペーパーでこします。絞らないこと。

プロのコツ

昆布とかつおの比率を変えて調整する
昆布多め→やさしく上品な旨み(椀物・茶碗蒸しに向く)
かつお多め→香りが強くはっきりした旨み(味噌汁・煮物に向く)
家庭では1:2(昆布:かつお)くらいが万能でおすすめです。

これが一本あれば和食はほぼ完結する
料理長として断言しますが、合わせだしを覚えれば和食の8割は作れます。最初に覚えるべき出汁はこれです。

昆布:かつおの比率旨みの傾向向いている料理
2:1上品・やさしい椀物・茶碗蒸し・湯豆腐
1:2(標準)バランスがいい味噌汁・煮物全般
1:3香り強め・力強い濃いめの煮物・つゆ

6. 煮干しだしの取り方|プロのコツ付き

煮干しだし(いりこだし)は昆布・かつおとは違う、力強いコクが特徴です。関西よりも関東・九州でよく使われます。

材料(1Lあたり)

  • 煮干し:20〜30g
  • 水:1L

手順

①煮干しの下処理
煮干しの頭とはらわた(腹の黒い部分)を取り除きます。これを怠ると苦味や臭みが出汁に出ます。

②水に浸す
鍋に煮干しと水を入れ、30分〜1時間浸けます(冷蔵庫で一晩でも可)。

③弱火で加熱する
弱火で加熱し、沸騰したらアクを取りながら10〜15分煮出します。

④こす
キッチンペーパーでこします。

プロのコツ

頭とはらわたは必ず取る
面倒でもここは手を抜かないでください。取り除くだけで雑味と臭みが格段に減ります。これが煮干しだしを美味しくする最大のポイントです。

煮干しの大きさで味が変わる
小さい煮干し→あっさり・上品
大きい煮干し→コクが強い・力強い
家庭の味噌汁には中サイズがバランスよくおすすめです。

煮干しのサイズ旨みの傾向向いている料理
小(5cm以下)あっさり・上品味噌汁・うどん
中(5〜8cm)バランスがいい味噌汁・煮物全般
大(8cm以上)コクが強い・力強い濃いめの味噌汁・ラーメン

7. 出汁の保存方法

せっかく取った出汁は正しく保存してください。

冷蔵保存
清潔な容器に入れ、冷蔵庫で保存。2〜3日以内に使い切ってください。

冷凍保存
製氷皿に入れて冷凍すると、使いたい分だけ取り出せて便利です。冷凍で2週間程度保存できます。

料理長として言わせてもらうと、週に一度まとめて取っておくのが一番効率的です。合わせだしを1L作っておけば、その週の味噌汁も煮物も全部使えます。

8. よくある失敗と対処法

Q. 出汁が濁ってしまった
A. 昆布を沸騰させたか、かつお節を絞った可能性が高いです。昆布は沸騰直前に取り出す、かつお節は絞らない、この2点を守るだけで澄んだ出汁になります。

Q. 出汁が臭い・生臭い
A. 煮干しの頭とはらわたを取り除いていない可能性があります。また、昆布やかつお節が古い場合も臭みが出ます。食材の鮮度を確認してください。

Q. 旨みが弱い・薄い
A. 食材の量が少ない、または加熱時間が短い可能性があります。食材の量を増やすか、水出しの時間を長くしてみてください。

Q. 出汁が苦い
A. 昆布を沸騰させすぎた、または煮干しのはらわたが残っている可能性があります。昆布は沸騰直前に取り出し、煮干しは下処理を丁寧に行ってください。

Q. 毎回味が違う
A. 食材の量と水の量を毎回計量していないことが原因です。慣れるまでは必ずはかりで計量する習慣をつけてください。

9. まとめ

出汁の取り方を4種類解説しました。

  • 昆布だし:水出しが基本。上品でやさしい旨み。
  • かつおだし:火を止めてから入れる。香りが命。
  • 合わせだし:和食の基本。これ一本で大抵の料理に対応できる。
  • 煮干しだし:頭とはらわたを取るのが鉄則。力強いコクが特徴。

最初から全部覚えなくていいです。まず合わせだしだけ覚えてください。それだけで家庭の和食が一段階上がります。

出汁は和食の土台。土台がしっかりすれば、料理は自然と美味しくなります。

料理長まっくるの和食帳では、現役料理長の視点から肉料理・和食の知識を発信しています。