梅干しにカビが生えるのは、塩をケチったせいだ

自宅で初めて梅干しを漬けたとき、健康志向で塩分を控えようと10%程度まで塩を減らしたことがある。梅酢は上がったが、10日ほど経った頃に容器の隅にうっすら白い膜が浮いていた。カビだった。塩を減らせば体にやさしいという発想は間違っていないが、漬物としての安全性まで考えると話が変わってくる。塩は味付けだけでなく、腐敗を防ぐ役割を担っている。

今日は塩分濃度の目安から、梅酢が上がるまでの手順、天日干しのやり方まで、基本の流れを書いていく。

塩分濃度の目安

伝統的な梅干しの塩分濃度は18〜20%が標準になる。梅1kgに対して塩180〜200gという比率だ。この濃度であれば、浸透圧の働きで雑菌が繁殖しにくく、常温保存でも長期間安定して持つ。

近年人気の減塩タイプは塩分8〜13%程度まで下げるレシピが多い。塩気がまろやかで食べやすくなる一方、浸透圧による防腐効果が弱まるため、カビや発酵不良のリスクが上がる。減塩で作る場合は、冷蔵保存を前提にする、消毒を徹底する、天日干しの工程を省略しないなど、通常より管理を丁寧に行う必要がある。

塩分濃度特徴保存性
18〜20%(標準)しっかりした塩味・伝統的な製法常温で年単位の保存が可能
13〜15%(やや減塩)塩味がまろやか要冷蔵・数ヶ月〜半年が目安
8〜12%(減塩)食べやすいが管理が難しい要冷蔵・カビのリスクが高い

初めて梅干しを漬けるなら、まず標準の18%前後で仕込むことをすすめる。塩分を減らす工夫は、基本の工程に慣れてからでも遅くない。

梅酢が上がるまでの手順

  1. 完熟した梅を洗い、へたを竹串で取り除く。水気をしっかり拭き取る。
  2. 清潔な容器に梅と塩を交互に重ねる。一番上は塩で覆うようにする。
  3. 梅の重さの2倍程度の重石を乗せ、ホコリよけに紙や布をかぶせる。
  4. 2〜3日で梅酢が上がり始める。梅が梅酢にしっかり浸っている状態を保つ。
  5. 梅酢が全体の梅を覆う量まで上がったら、重石を半分の重さに減らす。
  6. 赤しそを使う場合は、梅酢が十分上がった段階(1週間前後)でアク抜きしたしそを加える。

重石の重さは梅の状態を見ながら調整する。梅酢の上がりが遅い場合は重石を重くし、十分上がったら軽くして梅がつぶれるのを防ぐ。この状態で梅雨明けの土用干しの時期まで、1ヶ月前後漬け込む。

カビが生えやすい原因と対策

カビの主な原因は塩分不足、消毒不足、梅酢に浸っていない部分の存在、この3つに集約される。塩分が低いほど雑菌の抑制力が弱まる。容器や重石の消毒が甘いと、そこから雑菌が持ち込まれる。梅酢の量が足りず梅の一部が空気に触れていると、そこからカビが発生しやすい。

対策としては、容器と重石を焼酎(35度以上)で拭いて消毒すること、梅酢が十分に上がるまでは毎日容器の様子を確認すること、梅酢が足りない場合は塩水を足して梅全体を沈めておくことが挙げられる。白い浮遊物を見つけたら、産膜酵母か本当のカビかを見極める必要がある。表面に薄く広がる膜状のものは産膜酵母のことが多く、すくい取って梅酢を煮沸消毒すれば継続できる。黒や緑の斑点状のものは本物のカビで、その梅は取り除いたほうがいい。

料理長メモ:冒頭で触れた10%の減塩梅干しは、結局カビの部分を大きく取り除き、残った梅を塩分18%の梅酢に漬け直して事なきを得た。減塩で仕込むなら、最初から冷蔵庫で管理する前提で計画したほうがいい。常温に置いて様子を見る、という発想自体が減塩タイプには向いていない。

天日干し(土用干し)のタイミングとやり方

土用干しは梅雨が明けた7月下旬から8月上旬、晴天が3日以上続くタイミングで行う。梅酢から梅を引き上げ、ザルやすのこの上に重ならないように並べる。

1日目は朝から夕方まで日に当て、途中で1〜2回裏返す。夜は室内に取り込むか、夜露に当てて梅をやわらかくする方法もある。これを3日間繰り返す。最終日の夕方には梅の表面にシワが寄り、ふっくらとした質感に変わっているのが目安だ。天日干しによって水分が抜け、保存性が高まると同時に、独特の風味と食感が生まれる。

よくある失敗

梅酢が上がらない

重石が軽すぎることが主な原因だ。梅の重さの2倍程度を目安に、しっかり圧をかける。数日経っても上がりが悪い場合は、重石をさらに重くして様子を見る。

梅が皮切れする

完熟していない青い梅を使ったり、重石をかけすぎたりすることが原因になる。梅は黄色く熟して香りが立ってきたものを使い、梅酢が十分上がった段階で重石を半分に減らすと皮切れを防げる。

まとめ

梅干しの塩分は標準18〜20%が基本で、これより下げるほどカビのリスクが上がる。梅の重さの2倍の重石で梅酢を上げ、容器は焼酎で消毒し、梅酢が梅全体を覆っている状態を保つ。

土用干しは晴天が3日以上続くタイミングで、途中裏返しながら日に当てる。減塩で作りたい場合は、最初から冷蔵管理を前提に計画したほうが失敗が少ない。

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