「醤油ってどれも同じじゃないの?」「薄口醤油って薄味なの?」「たまりって何に使うの?」
違います。料理歴20年以上の現役料理長が、醤油の種類と使い分けを本音で徹底解説します。
醤油を使い分けるだけで、家庭料理の完成度が確実に一段階上がります。
醤油を知ると料理が変わる理由
醤油は和食の基本調味料のひとつ。「さしすせそ」の「せ」にあたります。塩分と旨みを同時に加えられる、和食には欠かせない存在です。
ただし一口に「醤油」と言っても、種類によって色・塩分・旨み・香りがまったく違います。料理に合わない醤油を使うと、色が濁ったり、塩辛くなりすぎたり、旨みが埋もれたりします。
料理長として20年やってきて断言しますが、醤油の選択を間違えると料理は仕上がらない。逆に正しく使い分けるだけで、いつもの料理がプロの味に近づきます。
醤油は5種類ある
日本農林規格(JAS)では醤油を5種類に分類しています。
- 濃口醤油(こいくちしょうゆ)
- 薄口醤油(うすくちしょうゆ)
- たまり醤油
- 白醤油(しろしょうゆ)
- 再仕込み醤油(さいしこみしょうゆ)
それぞれ製法・原料・用途が異なります。順番に解説します。
種類ごとの特徴・色・塩分・旨み
濃口醤油|和食の基本・最もスタンダード
日本で消費される醤油の約80%が濃口醤油です。「醤油」と言えばこれ。
色:濃い赤褐色
塩分:約16〜17%
味わい:旨みと塩みのバランスがよく、香りが豊か。加熱すると香ばしい醤油の香りが立ちます。
特徴:汎用性が最も高い。炒め物・煮物・タレ・つけ醤油と幅広く使えます。
料理長メモ:迷ったら濃口醤油。これ一本でほとんどの料理は対応できます。醤油を一種類しか置けないなら濃口醤油を選んでください。
薄口醤油|名前に騙されるな
「薄口」という名前から薄味・低塩分と思われがちですが、実際は逆です。
色:淡い琥珀色
塩分:約18〜19%(濃口より高い)
味わい:塩みが強くすっきりした味。旨みは濃口より控えめで、素材の色と味を活かします。
特徴:関西料理で多用。料理を茶色くしたくないときに使います。
料理長メモ:薄口醤油は「色をつけない醤油」と覚えてください。塩分は濃口より高いので、使いすぎに注意。茶碗蒸し・煮物の仕上げ・うどんのつゆなど、色を活かしたい料理に必須の調味料です。
たまり醤油|旨みの濃さは別格
大豆を主原料とし、小麦をほとんど使わない製法で作られます。東海地方(愛知・岐阜・三重)が主な産地。
色:非常に濃い黒褐色
塩分:約16%
味わい:旨みが非常に強く濃厚。独特の深みとコクがあります。加熱すると美しい照りが出ます。
特徴:刺身醤油・照り焼き・煎餅のたれとして最適。
料理長メモ:たまり醤油を刺身につけると、旨みの濃さが魚の旨みを引き立てて別次元の美味しさになります。一度試すと普通の醤油に戻れなくなる方が多い。小麦不使用のものが多いのでグルテンフリーの方にも向いています。
白醤油|色をつけたくないときの最終兵器
小麦を主原料とし、大豆の比率が低い醤油。愛知県碧南市が主な産地です。
色:淡い黄金色(醤油の中で最も色が薄い)
塩分:約17〜18%
味わい:甘みがあり、旨みは控えめ。香りは上品で繊細。
特徴:素材の色を完全に活かしたい料理に使います。
料理長メモ:白醤油は茶碗蒸し・白い煮物・お吸い物など、見た目の美しさを重視する料理に使います。前述の白だしの原料にもなっています。一般家庭にはあまり普及していませんが、一本あると料理の表現が格段に広がります。
再仕込み醤油|旨みの王様
通常の醤油を仕込む際に、塩水の代わりに醤油を使って仕込む製法。「甘露醤油」とも呼ばれます。山口県が発祥とされます。
色:非常に濃い黒褐色(たまりに近い)
塩分:約12〜13%(醤油の中で最も低い)
味わい:旨みが非常に強く、甘みとコクが深い。塩分が低いため、醤油そのものを味わう感覚。
特徴:刺身・寿司・冷奴など、醤油をダイレクトに味わう料理に最適。
料理長メモ:再仕込み醤油は「かける醤油」として使うのが正解。加熱料理には向きません。刺身に少量つけるだけで、魚の旨みと醤油の旨みが重なって格別の一口になります。価格は高めですが、特別な日の刺身には迷わず使ってほしい醤油です。
料理別の使い分け
煮物
おすすめ:濃口醤油(基本)・薄口醤油(白い食材を活かしたいとき)
肉じゃが・筑前煮などは濃口で。大根・カブ・白菜など白い食材の煮物は薄口を使うと素材の色が保てます。
刺身・寿司
おすすめ:たまり醤油・再仕込み醤油
旨みが濃く魚介の旨みを引き立てます。料亭では刺身に濃口醤油を使わないことも多い。
うどん・そばのつゆ
おすすめ:薄口醤油(関西)・濃口醤油(関東)
関西のうどんつゆが薄い色なのは薄口醤油を使うから。関東の濃い色のつゆは濃口醤油がベース。
照り焼き・焼き鳥のタレ
おすすめ:濃口醤油・たまり醤油
加熱で香ばしさが出る濃口醤油が基本。たまりを少量加えると美しい照りが出ます。
茶碗蒸し・お吸い物
おすすめ:薄口醤油・白醤油
色をつけたくない料理には必ず薄口か白醤油を。濃口を使うと全体が茶色くなります。
卵かけご飯・冷奴
おすすめ:濃口醤油・再仕込み醤油
シンプルに醤油の旨みを楽しむ料理には、旨みが濃い再仕込み醤油が最高。
だし巻き卵
おすすめ:薄口醤油・白醤油
卵の黄色を美しく保つには色の薄い醤油を。濃口を使うと仕上がりが茶色くなります。
料理長が普段使っている醤油と理由
正直に言います。私が厨房で常備しているのは3種類です。
①濃口醤油
煮物・炒め物・タレ・下味など、あらゆる料理の基本。これがなければ料理が成立しません。ヤマサ・キッコーマンなど定番品で十分ですが、できれば国産丸大豆使用のものを選んでいます。
②薄口醤油
茶碗蒸し・白い煮物・うどんつゆ・だし巻き卵に欠かせません。ヒガシマルの薄口醤油は安定感があって使いやすい。
③たまり醤油
刺身・照り焼きのタレに使います。少量でもコクと旨みが格段に変わるので、一本常備しておく価値があります。
白醤油と再仕込み醤油は場面に応じて使いますが、まず上記3種類を揃えれば家庭料理は十分対応できます。
保存方法・開封後の注意点
醤油は繊細な調味料です。保存方法を間違えると品質が急激に落ちます。
開封前:直射日光を避けた冷暗所で保存。
開封後:
- 必ず冷蔵庫で保存してください
- 開封後の使用期限は約1ヶ月が目安(薄口・白醤油は特に劣化が早い)
- 小さいボトルを買って早く使い切る方が品質を保てます
料理長メモ:開封後に常温放置すると、醤油は酸化して色が黒くなり、香りが落ちます。「醤油の色が黒くなってきた」と感じたら品質が落ちているサインです。特に薄口醤油と白醤油は劣化が早いので注意してください。大容量を買うより、こまめに小さいボトルで買い替える方が美味しい醤油を使い続けられます。
醤油5種類早見表
| 種類 | 色 | 塩分 | 旨みの強さ | 主な用途 | おすすめ度 |
|---|---|---|---|---|---|
| 濃口醤油 | 濃い赤褐色 | 約16〜17% | 中程度 | 煮物・炒め物・タレ全般 | ★★★★★ |
| 薄口醤油 | 淡い琥珀色 | 約18〜19% | 控えめ | 茶碗蒸し・白い煮物・うどんつゆ | ★★★★☆ |
| たまり醤油 | 黒褐色 | 約16% | 非常に強い | 刺身・照り焼き・煎餅 | ★★★★☆ |
| 白醤油 | 淡い黄金色 | 約17〜18% | 控えめ | お吸い物・だし巻き卵 | ★★★☆☆ |
| 再仕込み醤油 | 非常に濃い黒褐色 | 約12〜13% | 最も強い | 刺身・卵かけご飯・冷奴 | ★★★☆☆ |
まとめ
醤油の種類と使い分けをまとめます。
- 醤油は5種類あり、色・塩分・旨みがまったく異なる
- 薄口醤油は塩分が高い。「薄味」ではなく「色が薄い」醤油
- まず揃えるべきは濃口・薄口・たまりの3種類
- 刺身にはたまりか再仕込みで旨みを引き立てる
- 開封後は必ず冷蔵庫で保存・1ヶ月を目安に使い切る
醤油一本の選択で料理の色・味・旨みが変わります。まず薄口醤油を一本追加するところから始めてみてください。
料理長まっくるの和食帳では、現役料理長の視点から肉料理・和食の知識を発信しています。
料理長おすすめ|まず揃えたい醤油3種
記事で紹介した「まず揃えるべき3種類」のおすすめ商品を紹介します。
キッコーマン 特選丸大豆しょうゆ 1L(濃口醤油)
国産丸大豆を使用した濃口醤油の定番。旨みが豊かで香りがよく、煮物・炒め物・タレなど日常のあらゆる料理に対応できます。料理長も信頼して使い続けているブランドです。
ヒガシマル 薄口醤油 1L
料理長が厨房で常備している薄口醤油の定番品。茶碗蒸し・だし巻き卵・白い煮物・うどんのつゆなど、色をつけたくない料理に欠かせません。安定感があって使いやすく、関西料理には必須の一本です。
盛田 天然醸造おさしみたまり 200ml×2本
刺身専用のたまり醤油。無添加・天然醸造で、旨みが非常に濃く刺身の美味しさを最大限に引き立てます。一度使うと普通の醤油には戻れなくなる方も多い。200ml×2本なので使い切りやすいサイズです。