砂糖 vs みりん、甘みの使い分けをプロが解説|料理長が本音で教える正解

煮物のレシピを見ていると、砂糖とみりんが両方出てくることがある。かと思えば、みりんだけのレシピもある。「結局どっちで甘みをつければいいんだ」と手が止まったことはないだろうか。

料理歴20年以上の現役料理長として、正直に答える。砂糖とみりんは似ているようで、役割がまったく違う。この違いを知らずに適当に使っていると、煮物もテリヤキも、どこか物足りない仕上がりになる。

砂糖とみりんの甘みは何が違う?

結論から言う。砂糖の甘みは「速い」。みりんの甘みは「複雑で遅い」。

砂糖はショ糖という単一の糖でできている。舌に乗った瞬間にダイレクトに甘みを感じる。料理にパッと甘さを加えたいときに向いている。

みりんはもち米と米麹を発酵させて作る調味料だ。ブドウ糖・オリゴ糖・麦芽糖など、複数の糖類が混ざり合っている。だから甘みだけでなく、コクと旨みが同時についてくる。さらにアルコールを含んでいるので、煮込むことで素材に味を染み込ませる力もある。

砂糖は「甘みを足す道具」。みりんは「甘み・旨み・照り・浸透力を一度に持ち込む道具」。ここがまず大きく違う。

比較項目砂糖みりん
甘みの質シャープで速いまろやかで複雑
旨みなしあり(発酵由来)
照り・ツヤほぼなし強い
アルコールなし約14%
浸透のスピード遅い(分子が大きい)速い

煮物での使い分け

肉じゃがや筑前煮を作るとき、私は砂糖とみりんを両方使う。役割を分けて考えているからだ。

砂糖は素材にしっかり甘みを「入れ込む」ために使う。じゃがいもや大根のような根菜は、甘みが中まで染み込むのに時間がかかる。だから先に砂糖でベースの甘みを作っておく。

みりんは仕上げ寄りで使う。照りを出し、旨みを乗せ、香りを立たせる。

砂糖だけで作った煮物は、甘いけれど平坦な味になる。みりんだけで作った煮物は、上品ではあるけれど、根菜にしっかりした甘みを入れ込みたいときには物足りない。両方の特性を理解して配分するのが、家庭の煮物を一段階引き上げるコツだ。

「先に砂糖、後からみりん」の理由

和食の調味料の順番には「さしすせそ」という語呂合わせがある。砂糖→塩→酢→醤油→味噌、の順だ。みりんはこの中に明示されていないが、基本的には砂糖と同じか、やや後のタイミングで入れる。

理由は分子の大きさにある。砂糖の分子は塩よりも大きく、食材に染み込むのに時間がかかる。先に塩を入れてしまうと、塩の浸透圧で食材の水分が先に抜け、あとから砂糖が入りにくくなる。だから甘みを入れたい料理は、必ず砂糖が先。

みりんを後に回す理由はもうひとつある。みりんに含まれるアルコールと糖分は加熱しすぎると煮詰まりすぎてしまい、照りが濁ったりベタついたりする。仕上げ直前に加えることで、美しい照りとフレッシュな風味を保てる。

私が厨房でやっている手順はこうだ。

  1. 食材を炒める、または下茹でする
  2. 酒を入れてアルコールを飛ばす
  3. 砂糖を入れて味を染み込ませる(中火でしばらく煮る)
  4. みりん・醤油を加えて仕上げる

この順番を守るだけで、味の入り方も照りもまったく違ってくる。

テリヤキ・炒め物での使い分け

照り焼きのタレを作るとき、主役になるのはみりんだ。砂糖を多めに使うとべったりした甘さになり、肝心の照りが出にくい。みりんの糖類が加熱でカラメル化することで、あの艶やかな照りが生まれる。

照り焼きダレの黄金比は、醤油:みりん:酒=1:1:1。ここに少量の砂糖を足すかどうかは好みだが、私は基本的にみりんだけで仕上げる。みりんの複雑な甘みのほうが、肉や魚の旨みと喧嘩しないからだ。

炒め物は逆に砂糖が活躍する場面が多い。野菜炒めや肉野菜炒めで「コクが足りない」と感じたとき、砂糖をひとつまみ加えると味がまとまる。短時間調理だとみりんのアルコールが飛びきらず、生っぽい匂いが残ることがあるからだ。

炒め物には砂糖、煮込み・照り焼きにはみりん。これが基本の使い分けになる。

砂糖だけ・みりんだけではいけない理由

「みりんがないから砂糖で代用しよう」とよくやってしまうが、これは半分しか正解ではない。

砂糖だけで代用すると、甘みは出せても照りと旨みが出ない。煮物の表面がパサついた印象になりやすい。臭み消しの効果もない。魚や肉を使った煮物では、生臭さが残ってしまうことがある。

逆に「砂糖がないからみりんを多めに」というのも危険だ。みりんで強い甘みを出そうとすると、アルコール由来の風味が前面に出すぎて、料理全体がぼやけた味になる。みりんは「補助的な甘み」として設計されているので、主役の甘みをすべてみりんに任せるのは無理がある。

20年やってきて思うのは、砂糖とみりんはどちらか一方で完結する調味料ではないということだ。互いの弱点を補い合う関係にある。

早見表(料理別どちらを使うか)

料理砂糖みりん料理長のひとこと
肉じゃが・筑前煮両方使う。砂糖で染み込ませ、みりんで仕上げる
照り焼きみりん主体。照りが命
すき焼き割り下みりん多めが本格的な味に近づく
野菜炒め短時間調理は砂糖の方が安定する
だし巻き卵砂糖でやさしい甘みをつける
焼き鳥のタレ照りと旨みを優先
和え物(ごま和えなど)シャープな甘みが素材に合う
角煮・もつ煮込み長時間煮込むので両方の効果が活きる

まとめ

砂糖とみりんは、似ているようでまったく別の道具だ。

砂糖は甘みを速く、しっかり食材に入れ込む。みりんは甘み・旨み・照り・浸透力を同時に持ち込む、発酵由来の複合調味料。

煮物は基本的に両方使い、砂糖が先、みりんが後。照り焼きはみりん主体、短時間の炒め物は砂糖主体。この使い分けを覚えておくだけで、いつもの料理の仕上がりが変わってくる。

迷ったときは、この記事の早見表を見返してほしい。

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料理長おすすめ|砂糖とみりん、この2本があれば安心

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