痛んだ油だとわかっていたのに、「まだいける」と判断して揚げてしまったことがある。結果、店中が痛んだ油の匂いになった。揚げ油の替えどきは、何回使ったかでは決まらない。色と匂い、この2つで判断している。
回数では決まらない
店で使っているのはサラダ油だ。仕入れ先のプライベートブランドで、店頭では買えないものを使っている。天ぷらでも、から揚げでも、とんかつでも、揚げ物の種類によって油を変えることはしていない。
替えどきの基準は、色と匂いに尽きる。痛んでいない油なら、まだ替える必要を感じない。逆に、たった1回しか使っていなくても、色や匂いに違和感があれば、その時点で替える。回数は関係ない。
色は使うほど濁っていく。揚げているときに出る泡が、消えにくくなってくることもある。匂いも、揚げたての香ばしさから、どこか重たい、鼻につくような匂いに変わっていく。この変化を見逃さないことが、揚げ油を扱ううえでの基本になる。
1回で止めたほうがいい揚げ物
すべての揚げ物が、同じように油を長く使えるわけではない。
衣をつけて揚げるフライ系、カキフライやとんかつは、1回で油を止めることを勧めている。パン粉や衣の欠片が油の中に残り、それが焦げて次に使う油の匂いや色に影響してしまう。
唐揚げも同様だ。にんにくや生姜、醤油ベースの下味がついた肉を揚げると、油に匂いが強く移る。次に別の料理を揚げたとき、その匂いが混ざってしまう。匂いのきつい揚げ物をしたときは、その油を使い回さない判断をしている。
よく比較される油の違い
揚げ油を選ぶとき、何を基準に選べばいいのか迷う人は多い。よく比較される組み合わせを整理しておく。
サラダ油と米油の違い
サラダ油は複数の植物油を精製してブレンドしたもので、癖のない味と匂いが特徴だ。どんな揚げ物にも合わせやすく、価格も手頃なものが多い。
米油は米ぬかから作られる油で、酸化に強いとされている。揚げ物がべたつきにくく、カラッとした仕上がりになりやすい。価格はサラダ油よりやや高めになる。
サラダ油とごま油の違い
サラダ油は香りが控えめで、素材の味を邪魔しない。揚げ物全般に使いやすい油だ。
ごま油は香りが強く、揚げるとその香ばしさが料理に移る。中華料理の揚げ物などでは、あえてごま油を使って香りをつけることもある。ただし香りが強い分、どんな料理にも合うわけではない。
太白ごま油と焙煎ごま油の違い
ごま油にも種類がある。太白ごま油はごまを焙煎せずに搾った油で、色が薄く香りも控えめだ。揚げ油として使っても、素材の味を邪魔しにくい。
焙煎ごま油は、よく見かける茶色いごま油のことで、香りが強い。揚げ油として大量に使うより、仕上げに香りづけとして使う場面のほうが多い油になる。
家庭こそサラダ油でいい理由
家庭に勧める油も、サラダ油だ。もっと高い油、体にいいとされる油もあるが、一番応用が効くのがサラダ油になる。
油は開封した瞬間から酸化が進んでいく。高い油を買っても、使い切れなければ酸化したまま棚に置かれることになる。これでは、値段をかけた意味がなくなる。
ここで、店と家庭の条件の違いに触れておきたい。店は毎日大量に揚げ物をするので、油の回転が速い。仕込みでも営業中でも次々に使うので、1つの油が空気に触れたまま長時間放置されることはほとんどない。
家庭は逆だ。使う量が少ない分、一度開封した油が長く保存される。揚げ物をした日以外は、瓶の中で空気に触れたまま置かれている時間のほうが長い。同じ「痛んでいない」状態でも、家庭の油のほうが酸化は進みやすい。だからこそ、応用が効いて使い切りやすいサラダ油を、家庭では選んでおいたほうがいい。
ひとつ付け加えておくと、サラダ油は近所のスーパーで買うのが一番安い。1リットルで数百円の油に送料がかかると、割高になるだけだ。わざわざ取り寄せる油ではない。
使い終わった油をどうするか
揚げ終わった油をどう扱うかも、判断が分かれるところだ。
明らかにまだ次に使えそうな状態なら、漉して保管し、次の揚げ物に使う。色や匂いに違和感があれば、迷わず処分する。この判断も、回数ではなく状態で決めている。
店では、廃油回収業者と提携した廃油缶に油をためている。ある程度の量になったら、業者に取りに来てもらう流れだ。
家庭でこの仕組みはない。市販の油を固める凝固剤を使って処理するのがいい。固めてから可燃ごみとして出せば、扱いも簡単だ。排水口にそのまま流すのは避けたい。配管が詰まる原因になる。
料理長メモ:あの日、油が痛んでいることは分かっていた。それでも「まだいける」と判断した。油の管理で本当に怖いのは、気づけないことよりも、気づいていて先送りにすることだ。迷った時点で替えておくほうが、結局は安く済む。
価格帯で見る選択肢
| 油の種類 | 価格帯の目安 | 向いている人 |
|---|---|---|
| サラダ油 | 300〜600円(1L) | 揚げ物全般に幅広く使いたい人 |
| キャノーラ油 | 300〜700円(1L) | サラダ油に近い感覚で使いたい人 |
| 米油 | 500〜1,000円(1L) | 酸化しにくさやカラッとした仕上がりを求める人 |
| 太白ごま油 | 800〜1,500円(1L) | 素材の味を活かしつつ、ごま油の風味も少し足したい人 |
結局どれを買うべきか
高い油を選べば安心、というわけではない。使い切れずに酸化させてしまえば、値段の意味がなくなる。
家庭で揚げ物をする頻度が高くないなら、応用の効くサラダ油を選び、色と匂いで替えどきを見極める習慣をつけたほうがいい。フライ系や唐揚げのように匂いが強く移る揚げ物をしたときは、その油を無理に使い回さず、次で処分する判断をする。
油の管理は、回数を数えることではない。揚げるたびに、色と匂いを自分の目と鼻で確認すること。それだけで、油の状態はかなり見えてくる。
料理長おすすめ|後始末に一箱
油そのものはスーパーで買えばいい。ただ、後始末の道具だけは切らすと困る。揚げ物をした日に手元にないと、痛んだ油を流しに捨てたくなってしまう。
固めるテンプル 油凝固剤 18g×5包
温かいうちの油に溶かして、冷めたら固まる。固めてしまえば可燃ごみとして出せるので、流しに流す理由がなくなる。5包入りなら、家庭で揚げ物をする頻度なら当分もつ。かさばらないので買い置きしやすい。
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