から揚げは二度揚げで決まる。料理長がやっている温度と時間の使い分け

油の温度計が160度を指したところで、鶏肉を一つずつ静かに沈める。パチパチという細かい音が鍋全体に広がり、油の表面に小さな泡が立ち続ける。ここで焦って温度を上げると、衣だけ色づいて中が生になる。じっと2分半、音の変化だけを頼りに待つ。この最初の一投目が、から揚げ全体の出来を決めている。

家庭で「一度でカリッと揚げよう」とする人は多いが、油の温度が一定に保ちにくい家庭のコンロでは、二度揚げのほうが確実に失敗を減らせる。今日は下味から二度揚げの手順まで、温度と時間を具体的に書いていく。

下味のポイント

醤油・酒・おろし生姜・おろしにんにくに鶏もも肉を漬け込む場合、漬け込み時間は20〜30分が目安になる。これより短いと味が表面にしか入らず、長すぎると調味料の塩分で肉の水分が抜けてパサつく原因になる。むね肉を使う場合の下処理は別記事で詳しく解説しているので、そちらを参考にしてほしい。

漬け込んだあとは、キッチンペーパーで表面の水分を軽く押さえておく。水分が残ったまま粉をまぶすと、衣が均一につかず揚げムラの原因になる。

片栗粉・小麦粉の比較

粉の種類食感特徴
片栗粉のみカリッと軽い・パリパリ時間が経つと食感が落ちやすい
小麦粉のみ厚みのあるサクサク衣冷めても食感が持続しやすい
片栗粉+小麦粉(1:1)カリッとしつつ持続力ありもっとも扱いやすい万能配合

揚げたてのパリパリ感を最優先するなら片栗粉のみ、弁当用など時間が経ってからの食感を重視するなら小麦粉の比率を上げる。うちの店では片栗粉と小麦粉を1:1で混ぜて使っている。粉の量は肉100gに対して大さじ1が目安だ。つけすぎると油を吸いすぎて重たい仕上がりになる。

二度揚げの手順

  1. 油を160度に温める。菜箸を入れて細かい泡が静かに立つ状態が目安。
  2. 肉を入れて2分30秒、触らずにそのまま揚げる。この段階では中まで火を通しきる必要はない。
  3. 一度取り出し、バットの上で3〜5分休ませる。この間に肉の中心まで余熱で火が通っていく。
  4. 油の温度を180度まで上げる。
  5. 肉を戻し入れて1分〜1分30秒、表面がきつね色になるまで揚げる。
  6. 取り出したら立てて油を切る。寝かせると底面がべちゃつく。

合計の揚げ時間は4分前後になる。一度に長く揚げ続けるより、低温でじっくり中まで火を入れ、高温で表面だけ短時間仕上げるほうが、中はしっとり外はカリッとした状態を両立できる。

料理長メモ:見習いの頃、油の温度を測らずに感覚だけで揚げていて、大きめの鶏肉を中まで火を通すために低温のまま8分近く揚げ続けたことがある。衣は油を吸ってべたつき、身は硬くパサついていた。温度計は面倒でも使ったほうがいい。感覚が仕上がりを裏切ることは、意外と多い。

よくある失敗と原因

衣がべちゃつく

揚げたては油を大量に含んだ状態にある。バットに寝かせたまま置いておくと、この油と蒸気が抜けきらずに衣がふやける。揚げたては網の上か、立てかけた状態で油を切ることが大事だ。重ねて置くのも同じ理由で避けたほうがいい。

中まで火が通らない

一度に大きめの肉を高温で短時間だけ揚げると、表面は色づいても中心温度が上がりきらない。肉の大きさが不揃いだと、この差がさらに出やすくなる。ひと口大(30〜40g程度)にそろえて切ることと、二度揚げの休ませる工程を省かないことが対策になる。

まとめ

から揚げの二度揚げは、低温160度で中まで火を通し、休ませて余熱を行き渡らせ、高温180度で表面だけ仕上げる。この温度差を使い分けるだけで、家庭のコンロでも中はしっとり外はカリッとした仕上がりに近づく。

衣のべちゃつきは油切りの姿勢、火の通りの甘さは肉の大きさと休ませる工程。原因がわかれば、対策はそれほど難しくない。

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