塩は2種類あればいい。料理長が教える使い分け

塩は5種類も6種類も揃える必要はない。家庭に必要なのは、下ごしらえ用と仕上げ用、たった2種類だけだ。塩売り場に並ぶ精製塩・粗塩・岩塩・海塩・藻塩を全部買い揃えようとする人がいるが、そこまでする意味は正直ない。

今日は塩の種類ごとの違いを整理したうえで、結局どれを買えばいいのか、はっきり結論まで書いていく。

塩の種類ごとの特徴

塩の味わいの違いは、原料と製法の違いから生まれる。

精製塩は海水をイオン交換膜という設備で処理し、塩化ナトリウムの純度を99%以上まで高めたものだ。ミネラル分がほとんど取り除かれているため、味は鋭くストレートな塩辛さになる。

粗塩(あら塩)は、海水を煮詰めて結晶化させる製法が中心で、精製塩よりミネラル分が残っている。粒が大きくしっとりしていて、まろやかな塩気が特徴だ。

岩塩は、太古の海水が地殻変動によって地層に閉じ込められ、結晶化したものを採掘して作る。海のミネラルは含んでいるが、湿気を含まないため粒がサラサラしている。

海塩は現在の海水を蒸発・濃縮させて作る塩の総称で、粗塩もこのカテゴリーに含まれる。産地や結晶化の方法によって味の幅が広い。

藻塩は、海水を煮詰める工程でホンダワラなどの海藻を加えて作る、日本の伝統的な製法の塩だ。海藻由来の旨み成分が加わり、他の塩にはない独特のコクが出る。

よく比較される塩の違い

精製塩と粗塩の違い

精製塩はミネラル分をほぼ取り除いた純粋な塩化ナトリウムで、味がシャープで角が立つ。粗塩はミネラル分が残っているため、同じ塩辛さでもまろやかで丸みのある味に感じる。価格は精製塩のほうが圧倒的に安く、粗塩は製法の手間の分だけ高くなる。日常的に大量に使う下ごしらえには精製塩、味に丸みを出したい料理には粗塩、という使い分けが基本になる。

岩塩と海塩の違い

岩塩は太古の海水が地層に閉じ込められて結晶化したもの、海塩は現在の海水を蒸発させて作る塩だ。原料はどちらも海水由来という点では共通しているが、岩塩は乾燥した状態で採掘されるため粒がサラサラしていて、ミルで挽いて使うタイプが多い。海塩は湿気を含みしっとりしたものが多く、指でつまんで振りやすい。和食の繊細な味付けには、粒の細かさを調整しやすい海塩のほうが扱いやすいと感じている。

天然塩と精製塩の違い

天然塩とは、粗塩・岩塩・海塩・藻塩など、ミネラル分を残したまま作られる塩の総称になる。精製塩との最大の違いは塩化ナトリウムの純度と、それに伴う味の丸みだ。精製塩は99%以上が塩化ナトリウムでシャープな塩辛さ、天然塩はマグネシウムやカリウムなどのミネラルが1〜5%程度残っていて、まろやかさと複雑な旨みが加わる。塩分の摂取量そのものは種類による大差はないので、健康効果を過度に期待するより、味の違いとして捉えたほうが実用的だ。

種類別の比較表

種類製法粒の大きさ価格帯(100gあたり)向く用途
精製塩イオン交換膜で精製細かくサラサラ10〜30円下ごしらえ・大量使用
粗塩(あら塩)海水を煮詰めて結晶化やや粗くしっとり50〜150円塩もみ・茹で塩・下味
岩塩地層から採掘粗い・硬め100〜300円肉料理・ミルで挽いて仕上げ
海塩海水を蒸発・濃縮産地により幅がある100〜400円刺身・天ぷら・焼き物の仕上げ
藻塩海藻を加えて煮詰めるしっとり細かめ200〜500円おにぎり・焼き物・素材を活かす料理

結論、家庭に必要なのは2種類だけ

5種類全部を使い分けている家庭料理人には、まだ会ったことがない。実際に必要なのは次の2種類に絞られる。

  • 下ごしらえ用:精製塩、または安価な粗塩を大量に使う。茹で塩や塩もみ、肉や魚の下味など、量を気にせず使う場面がほとんどだ。100gあたり10〜50円程度のものを、けちらず使うのが正解になる。
  • 仕上げ用:海塩や藻塩のような、味に丸みとコクがある塩を少量だけ使う。刺身に添える、天ぷらにひとつまみ、焼き上がった肉の表面に振る。仕上げの一振りは料理の印象を大きく左右するので、ここだけはいい塩を選ぶ価値がある。

この2本立てで、家庭料理はほぼすべて対応できる。岩塩をミルで挽いてステーキに使う、藻塩をおにぎりに使う、といった追加は好みの範囲であって、必須ではない。

料理長メモ:駆け出しの頃、高価な岩塩を茹で塩に使ってしまい、パスタの湯1リットルに惜しげもなく溶かしたことがある。仕上げに使えば粒の食感と旨みが活きる塩を、大量の湯に溶かしてしまえば普通の塩と何も変わらない。いい塩は、そのまま口に入る場面のために取っておくものだと思い知った。

よくある失敗

塩辛くなる

精製塩と粗塩を同じ感覚の分量で使っていることが原因になりやすい。粗塩は粒が大きく、同じ体積でも塩化ナトリウムの量が精製塩よりやや少ない傾向がある。レシピを塩の種類を変えて再現する場合は、一度小さじ1杯分の重さを量っておくと失敗が減る。

味が決まらない

下ごしらえと仕上げ、両方の場面で同じ塩を使っていることが多い。安い精製塩だけで仕上げまで済ませると、料理全体の味が単調になりやすい。仕上げの最後の一振りだけ塩を変えるだけで、同じ料理でも印象がはっきり変わる。

まとめ

精製塩はシャープな塩辛さで下ごしらえ向き、粗塩・海塩・藻塩はまろやかさとコクがあり仕上げ向き、岩塩はミルで挽いて肉料理の仕上げに使うと個性が出る。それぞれ製法とミネラル量の違いが味の差になっている。

結局のところ、家庭に必要なのは下ごしらえ用の安い塩と、仕上げ用のいい塩、この2種類だけで十分だ。5種類揃える手間とコストをかけるより、この2本立てを徹底したほうが、日々の料理の完成度は確実に上がる。

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