新人の教育係って、思っていたよりずっと難しいものです。やる気はあっても現実は思うようにいかず、心がすり減ることもありますよね。そんなときに少しでも気持ちが軽くなるように——今回は、私自身の経験を交えながら、新人と向き合う中で学んだ大切な考え方をお伝えします。
1、新人教育って思っていたより難しい
「新人」というぐらいなので右も左も分からないのが普通なのですが、その状況から職場で戦えるように育てるのが「新人の教育係」です。ただ大体の新人は、先日まで学生だった人がほとんど。その「ほぼ学生」を社会で戦えるようになるまで育てるのはかなり骨が折れます。
かくいう私も若い頃は沢山新人の面倒を見ましたが、ほとんどが挫折や転職をしてしまうという悲しい展開になったのをふと思い出しました。上手く育てるって本当に難しいです。
2、私もかつては出来の悪い新人だった
そんな私にも新人時代があった訳で、ではどういう新人だったのかと言えばミスばかりする出来の悪い新人でした(笑)
3、「正解を背負いすぎる」と教育はつらくなる
新人教育で一番心がすり減る理由のひとつは、「自分が正解を出さなきゃ」と背負いすぎてしまうことだと思います。
「早く一人前にしなければ」「しっかり育てなきゃ」という思いが強すぎると、相手が思うように育たないたびに、自分を責めてしまうんです。
私もそうでした。
「できないのは自分の教え方が悪いからだ」と悩み、「どうすれば伝わるんだろう」と試行錯誤を繰り返しました。ときには、「向いていないんじゃないか」と自信を失ったこともあります。
でもあるとき、先輩から言われた言葉が、私の考え方を少し変えてくれました。
「育てるって、“完成品にすること”じゃないんだよ。“成長のきっかけ”をつくることなんだ。」
新人がどんなスピードで、どんな道筋で成長するかは、正直なところ私たちにはコントロールできません。
できるのは、「成長の種を渡すこと」だけです。
そう思えるようになってから、私は少し肩の力が抜けました。
完璧に育てることを目指すのではなく、「今できる一歩を一緒に積み重ねていく」ことに意識を向ける。そうすると、相手の成長を焦らずに見守れるようになったのです。
4、「できない新人」にイライラしたとき、救われた考え方
新人教育に悩んでいる方へ、私がこれまでの経験で学んだ「心をすり減らさないための考え方」を5つお伝えします。
① 「自分も昔は同じだった」と思い出す
ミスばかりする新人を見ると、つい「なぜこんな簡単なことができないんだ」と思ってしまうことがあります。
でも、よく考えれば、私もかつては同じように失敗ばかりしていました。
あの頃の自分の姿を思い出すと、不思議とイライラは和らぎます。
「この子も、今は“通過点”にいるだけなんだ」と思えると、少しだけ優しくなれるのです。
② “いきなり大きな成果”を求めない
新人に対してつい期待してしまうのが、「すぐに成長してほしい」という気持ちです。
でも、どんなに優秀な人でも、最初から完璧にできる人はいません。
1ミリの成長でも、それは大きな一歩です。
たとえば、昨日は指示を忘れていた新人が、今日はメモを取っていた。
その小さな変化を「成長」として見られるようになると、自分の心もずいぶんと楽になります。
③ 「伝わっていない=教え方を変えるチャンス」と考える
「何度言っても同じミスをする」と感じるとき、それは新人が悪いのではなく、教え方が相手に合っていない可能性があります。
以前、私も何度も同じミスを繰り返す新人に苛立ちを感じたことがありました。
でも、あるとき思い切って説明の仕方を変えてみたら、嘘のようにスッと理解してくれたんです。
それ以来、「伝わらない」は「まだ別の伝え方がある」というサインだと思うようになりました。
④ “できたこと”を言葉にして伝える
私たちはつい「できていないこと」にばかり目が行ってしまいがちです。
でも、新人にとっては、「できた」と感じられる瞬間こそが次の成長の原動力になります。
「昨日より声が出ていたね」「前より落ち着いて接客できていたよ」と、できた部分をきちんと伝える。
それだけで新人の表情は変わり、意欲も湧いてくるものです。
⑤ 「自分ひとりで背負わなくていい」と知る
新人教育は、自分だけの責任ではありません。
組織全体で新人を育てる意識を持つと、心に余裕が生まれます。
私も、昔はすべてを自分で抱え込もうとして、勝手に疲れていました。
でも、先輩や同僚に相談したり、一緒に新人の成長を考えたりするようになってから、「育てるのはチームの仕事」だと実感するようになりました。
5、おわりに:「新人も未完成。私たちも未完成。」
新人教育というのは、不思議なものです。
相手を育てているようで、実は自分自身が育てられている——そんな感覚を、私は何度も味わってきました。
新人は未完成です。失敗もたくさんします。
けれど、それは「まだ伸びしろがある」ということ。
そして、教える私たちもまた未完成で、成長の途中なのだと思います。
完璧じゃなくていいんです。
焦らず、一歩ずつ、一緒に歩んでいけばいい。
今日もミスをした新人が、明日少しだけ変わるかもしれない。
その変化を信じて、向き合っていけばいいのです。
——そして何より、自分自身にもこう声をかけてあげてください。
「あなたも、ちゃんと頑張っているよ」と。