和牛の部位完全ガイド|料理長が全12部位を徹底解説

「和牛」と一口にいっても、実は部位ごとにまったく別の食材といえるくらい、味も食感も違います。

料理長として日々お肉を扱う中で、お客様から一番多くいただく質問が「結局、和牛のどの部位が美味しいの?」というもの。でもこの問いには、シンプルな答えがありません。なぜなら、「美味しい部位」は、何を食べたいかによって変わるからです。

この記事では、現役の料理長として実際に毎日扱っている目線で、和牛の主要12部位を徹底解説します。それぞれの特徴・味わい・向いている調理法まで、知っておくと肉選びがガラッと変わるはずです。

和牛はまず「5つのブロック」で覚える

部位を覚える前に、牛肉の大きな構造を知っておくと一気に頭に入ります。

牛肉は大きく分けて、以下の5つのブロックに分類されます。

ブロック主な部位特徴
肩ロース、ウデ、ミスジ、ザブトン動きが多く、味は濃いが筋もある
背中(ロイン)リブロース、サーロイン、ヒレ動きが少なく、最高級部位が集まる
肩バラ、ともバラ、カルビ脂が乗りやすく、コクが強い
ももランプ、イチボ、内もも、外もも脂は少なめ、赤身の旨みが豊か
すね・その他すね、テール、タン、ハラミなどホルモン系、出汁向けが多い

動きが少ない場所ほど、肉質が柔らかい——これが基本ルールです。だから背中の「ロイン」が最高級になり、よく動く「すね」は煮込み向きになります。

【背中の部位】最高級が集まる王道エリア

肩ロース(クラシタ)

肩の中でも背中に近い位置にある部位。サシ(脂の入り方)が美しく、赤身と脂のバランスが絶妙です。

料理長の視点でいうと、「美味しさのコスパが一番高い部位」。リブロースやサーロインほど高くないのに、しっかりと和牛の旨味を味わえます。すき焼きやしゃぶしゃぶで使うと、上品な脂が出汁に溶け込んで、肉も野菜も美味しくしてくれます。

料理長メモ:肩ロースを焼く時は、両面をサッと強火で焼いてから、火を弱めて中までゆっくり火を通すと、脂が溶けて口の中でとろけます。

リブロース

肩ロースの隣、背中の中央に位置する部位。「霜降りの王様」と呼ばれるほど、サシの美しさで右に出るものがありません。

A5ランクの和牛を語るとき、多くの場合「リブロース」が基準になります。ステーキはもちろん、すき焼きでも一流の風味を発揮します。

サーロイン

背中の腰側にある、ステーキの代名詞ともいえる部位。リブロースよりも肉質がしっかりしていて、噛んだときの「肉らしい食感」が強いのが特徴です。

「sirloin(サーロイン)」の語源は、英国王が「サー(騎士の称号)」を与えたほど美味しかったという逸話があるほど。それくらい肉らしい肉の代表です。

ヒレ(フィレ、テンダーロイン)

サーロインの内側、背骨の下にある最も動かない筋肉。だから牛肉の中で一番柔らかい部位です。

脂はほとんどなく、赤身の極みと言える上品な味わい。料理長として申し上げると、これは「霜降りが苦手な人」「ご年配の方」に絶対的な人気があります。ナイフがスーッと入る感触は他の部位では味わえません。

料理長メモ:ヒレは火を入れすぎると一気にパサつきます。ミディアムレア(中心が温かく赤い状態)が一番美味しい焼き加減です。

【肩の部位】通好みのうま味エリア

ミスジ

肩の中の小さな部位で、「希少部位」の代表。1頭の牛から2〜3kgしか取れません。

きれいなサシが入り、しかも赤身の旨味がしっかりある。「サーロインの上品さと、もも肉の濃さ」の両方を併せ持つ、まさに料理人が好む部位です。焼肉やステーキで一度食べると、その美味しさにハマる人が多いです。

ザブトン

肩ロースの一部で、こちらも希少部位。「肉のお布団のように厚みのある霜降り」から名前がつきました。

リブロースに匹敵するほどの濃厚なサシで、薄切りにしてしゃぶしゃぶにすると、口の中でほろりと溶けるような食感が楽しめます。

【腹の部位】脂とコクのエリア

カルビ(ともバラ)

焼肉でおなじみのバラ肉。腹側の脂が乗った部位で、和牛らしい甘い脂の風味が一番出る場所です。

「カルビ」は本来朝鮮語で「あばら骨周辺の肉」を指す言葉で、実は肩バラもカルビになります。

肩バラ(ブリスケ)

肩寄りの腹肉。赤身と脂が層になっているのが特徴で、煮込みやスープにすると最高の出汁が取れます。

私もまかないで「牛すじカレー」を作るときは、よくこの部位を使います。じっくり煮込むと脂と旨味が溶け出して、何時間でも煮ていたくなる味になります。

【ももの部位】赤身の旨味エリア

ランプ

ももの上部、サーロインの後ろにある部位。赤身ながらほどよく脂が入り、肉の味が濃いのが特徴です。

ローストビーフを作るときは、私は迷わずランプを選びます。赤身肉の中で一番「肉らしさ」が出る部位だからです。

イチボ

ランプの隣にあるお尻の部位。柔らかさと旨味のバランスが秀逸で、これも希少部位の人気者。

ステーキにすると、噛むほどに肉汁があふれる感じが他の部位と比べてダントツです。

内もも・外もも

ももの内側と外側。赤身が強く、脂は控えめ

「霜降りが苦手」「健康的に肉を楽しみたい」という方に向いています。スライスして煮物に使ったり、薄切りでローストビーフにしたりと汎用性が高い部位です。

【希少部位・その他】料理長おすすめの隠れた名選手

カイノミ

バラの一部で、ヒレに似た味わいの意外な部位。1頭からわずか2kg程度しか取れません。

「バラなのに柔らかい」という不思議な部位で、焼肉で出てくると思わずニヤッとしてしまうほどの美味しさ。

サガリ・ハラミ

横隔膜まわりの肉。内臓に分類されることが多いですが、実は赤身肉として扱われることも。

肉本来の濃い味わいがあり、焼肉店では大人気。ホルモンっぽさは少なく、赤身好きにおすすめです。

シンシン(しんたま)

ももの中心にある小さな部位。赤身の柔らかさNo.1といえる隠れた逸品で、刺身やたたきにすると最高です。

部位を知ると、和牛がもっと面白くなる

ここまで12部位を紹介してきましたが、和牛の世界は本当に奥が深いです。

「とにかく霜降りが好き」という方はリブロースやサーロインを。
「肉らしい肉が食べたい」ならランプやヒレを。
「希少部位を試したい」ならミスジ、ザブトン、カイノミを。

このように、自分の好みと食べ方に合わせて部位を選べるようになると、和牛の楽しみが何倍にも広がります。

料理長からのメッセージ

私は毎日和牛と向き合ってきましたが、「これが絶対に一番」という部位はありません

その日の気分、一緒に食べる人、季節、料理法によって、ベストな部位は変わります。だからこそ、いろんな部位を試してみてほしい。「自分のお気に入り部位」を見つける旅が、和牛の本当の楽しみ方だと思っています。

このブログでは、これからも一つひとつの部位を深掘りしていきます。次回は「和牛の希少部位ランキング」をお届けする予定です。

ぜひ、お気に入りの和牛部位を見つけてみてくださいね。🍳